特定調停と任意整理の違い【話し合いでの借金整理の方法】
債務整理の方法には、個人再生や自己破産など様々な方法がありますが、その中でも比較される機会が多いのが、『特定調停』と『任意整理』の2種類の借金整理です。
これらはいずれも。債権者と債務者との話し合いにより、残債や今後の返済プランを決定する方法のため、比較をされやすいのだと考えられます。
ただし、細かくチェックしていくと、実はかなり相違点がある手法です。そのため、話し合いでの借金問題解決を考えている方は、どちらの手法を選ぶのかを誤ってはいけません。
というのはどちらを選ぶかによって、最終的に返済する金額も異なってくる上に、過払い金が返ってこないというデメリットもあるからです。
そこで、以下ではそれらの2つの方法の違いについて、詳しく解説します。毎月の返済が苦しくて、債務整理を検討している方には知っておいて欲しい内容ですので、ぜひチェックしてください。
1.任意整理は弁護士や司法書士の力を借りる必要がある

特定調停では簡易裁判所の調停委員が、債権者と債務者と間に入って交渉を進めてくれます。そのため、弁護士や司法書士に依頼をしなくても、手続きを進めることが可能です。
一方、任意整理では裁判者が介在することはありません。あくまで、債権者と債務者との間での私的な話し合いでの解決ですので(私的整理)、個別交渉が必要となります。
当然ですが、債務者個人が「返済するお金を減額してください!」とお願いしても、金融業者が話を聞いてくれるはずがありません。ですから、借金問題のプロである弁護士や司法書士に依頼する必要があるわけです。
そのように弁護士費用が一切かけずに手続きをできることが、特定調停のメリットと言えます。
2.特定調停では過払い金が戻ってこない

先ほどは特定調停のメリットを書きましたが、続いてはデメリットにあたる部分です。その1つが、特定調停で借金整理をすると過払い金が1円も戻ってこないという点です。
過払い金は利息制限法での金利を上回って、返済したお金のことを指します。任意整理では弁護士がそれも含めて、交渉をしてくれるのが常識です。
しかし、特定調停で仲介をしてくれる調停委員は、過払い金についてまでを調査してくれないんですね。そのため、返済を請求することができなくなります。
人によっては、過払い金が何百万円に上るというケースもあるので、少しでも過払い金がある方にとっては、特定調停を選ぶと金銭的に損をする可能性が非常に高くなります。
3.特定調停では未払い利息・遅延損害金は支払わなくてはいけない

もう一点、特定調停には任意整理と比べてデメリットと言えることがあります。それは、調停成立日までの未払い利息や遅延損害金を支払わなくてはいけないことです。
これらの金額は任意整理では免除されることが普通ですので、最終的に返済する金額の合計も特定調停の方が、どうしても多くなってしまいます。
以上が任意整理と特定調停の大きな違いです。なお、それぞれの違いを比較表にまとめると、以下の通りになります。
■個人再生と自己破産の比較表
特定調停 | 任意整理 | |
---|---|---|
弁護士・司法書士への依頼 | ![]() |
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過払い金 | ![]() |
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未払い利息 | ![]() |
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未払い利息 | ![]() |
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遅延損害金 | ![]() |
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詳細解説 | 詳細へ | 詳細へ |
なお、どちらを選んだ方がメリットが大きいかについてですが、「過払い金がある」もしくは「未払い利息・遅延損害金の合計が2万円以上になる」場合には、任意整理を選んだ方が債権者にとってはメリットあると言えます。

というのは、任意整理を司法書士や弁護士に依頼した場合、解決報酬の相場は2万円~4万円程度だからです。
そのため、未払い利息やの合計が2万円以上になる場合には、任意整理を選んだ方が債権者にとってはメリットあると言えるでしょう。
実際、そのような理由から特定調停を選ぶ方は激減しており、ピーク時の2003年は約56万件だったにも関わらず、2010年には約3万件にまで減少しています。おそらく、今後もその件数はどんどん減っていくでしょう。
なお、任意整理をはじめとする債務整理について無料相談に乗ってくれる法律事務所は、以下の記事で紹介していますので、そちらもご参考にしてみてください。
債務整理におすすめの法律事務所
本記事のまとめ
債権者との話し合いで借金を解決する手法として、任意整理と特定調停があります。
なお、最終的に返済する金額は任意整理の方が少なりますので、金額的に考えると債務者にとってはそちらの方がメリットのある方法です。